渡航先のカンボジアでは、首都プノンペンにあるPreah Kossamak Hospitalにて病院スタッフを対象に感染症予防に関する教育・支援を行っています。
現地での私の活動は、主にレクチャー、物品提供、モニタリングの3つに分かれており、感染症予防の知識をレクチャーで伝え、物資の不足を物品提供で補い、その成果をモニタリングによって測定するということを行っています。レクチャーに関しては、「標準予防策」と呼ばれる感染症予防の最も基本となる事項(例えば、グローブやマスクなどの個人防護具の適切な使用、手指消毒剤の適切な使用など)に関する指導を定期的に行っています。これに加え、物品の適切な提供ならびに使用量の推移測定を行うとともに、「感染症予防に関して適切なタイミングに適切な行動ができているか」などを目視にてモニタリングしています。
現在少しずつ成果が出始めたところで、スタッフの感染症に関する知識と衛生意識を向上させることができたと感じています。しかし、重要なのはこの状態を継続することであり、そのための具体的な方法を試行錯誤しながら活動しているところです。最近では、病院の院内感染予防チームやフランスのNGOと協力体制をとりながら活動を行っており、互いのプロジェクトの進捗および医療関連情報の共有や協働プロジェクトの実施を行っております。現在では院内の手指消毒剤分配のシステム改善について、これら2つの組織と共に取り組んでおり、少しずつ成果を上げているところです。
このように、カンボジアとフランス、日本という遠く離れた国の出身同士ですが、同じ目標をもつ仲間として共に日々邁進しています。
1.申請から一次選考まで
今回応募したきっかけは、偶然校内で見かけたポスターでした。
当時、既に海外留学を検討中であり、現在の受け入れ先機関とインターンシップについて交渉をしていました。それまでNGOのインターンシップをメインとした留学プランで奨学金がもらえるとは思っておらず、奨学金に関してはほぼ諦めていました。ところが、説明会へ足を運んだところ、奨学金支給対象となることを知り、すぐに申請への準備を始めました。
私が応募で意識していたことは、「理解してもらうこと」です。
私はそれまで海外に渡航したことは一度もなく、見知らぬ土地へ、たった一人で飛び立つということは私にとって大きな決断でしたが、その決断のもとである「自身の想い」そして「その想いをどのような形にすれば伝えられるか」を準備段階ではとても重要視しました。具体的には、「本制度はどういった背景で設立され、目的はどういったことであるのか」をまず理解し、「応募書類の設問や選考の内容や形式はどこに焦点が置かれているのか」、「選考の審査員はどういった人達なのか」などについて色々と考察しました。そして、応募書類作成では上記のことに意識を向けながら何度も見返し、時には周囲の人々から意見をいただきました。
2.二次選考の準備
二次選考は個人面接、グループディスカッション、プレゼンテーションという内容でした。
ここで私が重要視していたことは、一次選考と同じく「理解してもらうこと」でした。
「誰に、何を、どのような言葉に乗せて伝えるのか」、「聞き手はどのような状態なのか」といったことを考えながら準備を行い、面接やプレゼンテーションの準備に取り掛かり、内容について考えを巡らせました。
また給付型奨学金という投資に近いものを貰う以上、プランを実行する上での責任感を示さなければいけないと考えました。この点については、いかに自分の強みを伝え、プランの実現性を示すかを思案しました。自分は何者であり、どういった強みをもっており、いかに弱みをカバーしてきたか、プランをより良いものにするためにこれまで何を行ってきたか、今何をしているか、このようなことを自分の言葉で語れるようにしました。
二次選考に臨むにあたってもう一点重要視していたことがあります。それは「いかに伝えるか」です。
二次選考は書類審査と違って対面式の選考なので、伝え方に幅があります。実際選考では実に多様なプレゼンテーションを見ることが出来ました。自分の想いをいかに伝えるか、書籍やインターネットから情報を得て、発表の質の向上を目指しました。またプレゼンテーション資料の作成では多くの方にご協力をいただきました。様々な方に発表を聞いてもらい、フィードバックをいただき、伝えたい内容が伝わっているか、伝わっていないならばなぜそうなるか、どうすれば改善できるか、といった試行錯誤を繰り返しました。
3.二次選考当日
選考の当日は、現場の雰囲気に慣れようと2時間ほど前に会場付近に到着し、近くのカフェでプレゼンテーションの確認をしていました。上記の「理解してもらうこと」、「いかに伝えるか」を念頭に、自分の出来ることを最大限発揮できるように準備をしていたのですが、このときは、これから迎える審査のことを想像して緊張し、落ち着かない状態でした。
しばらくして、ふとしたことから他の応募者の方と話す機会があり、面接の直前まで互いにプランについて話し合いながら過ごしていました。他の方々は、自分とは専攻も留学プランも全く異なり、興味深い話を多く聴くことが出来ました。そうしているうちに自然と緊張もほぐれ、今日一日は楽しみたいという気持ちに切り替わっていたのが印象的です。このような人々に出会えただけで、選考を受ける価値はあったと思います。
4.選考を振り返って
選考が終了した直後は、成果についてあまり自信がなかったのですが、その一日を「楽しむこと」はできていたように思います。選考の前後で、応募者の方々と互いの活動について話し合いましたが、全国から応募者が集うだけあって、プランは興味深いものばかりであり、人物も魅力的な方ばかりでした。また自身のプランに応用できることや、協力者の紹介など有益な情報を数多く得ることが出来ました。同時に自分の未熟さを感じ、プラン実行についての課題も明らかとなりましたが、この日のことは、その後の過ごし方に大きく影響しました。
自身の想いを実現するためにこれから何ができるか、どこまでできるか、そういったことをワクワクした気持ちで考えながら帰路についた一日でした。
応募書類を提出してから数カ月、周囲の人々の協力のかいあって書類選考の通過連絡を受けることができました。
私はこの「トビタテ!留学JAPAN」によりカンボジアで医療支援に携わることができ、本当に自分の人生の転換期の、そしてその「ど真ん中」にいることを実感しています。このカンボジアでの体験は、私の人生にとって非常に大きな意味を持つことは確かであり、後に続く後輩たちも恐れずにチャレンジしてもらいたいと考えています。
私は留学をしたことがありませんでした。だけど、この留学で自分の人生が大きく変わっていっているのを実感しています。
後輩の皆さんも、是非、チャレンジしてみてください!トビタテ!!